コラム

 公開日: 2015-07-30 

イッキ飲みの法的責任

弁護士の田沢です。

サークルのイッキ飲みで急性アルコール中毒に陥り,そのまま放置されて死亡した学生の遺族が,一緒にいた他の学生の法的責任を追及する訴訟を提起したとの報道がありました。30年ほど昔,自分もサークル活動などでよくイッキ飲みをさせられましたし,後輩にもさせたことがありました。当時は,そんな節度のないお酒を経験することで大人になっていくような感覚でしたし,先輩・後輩の連帯感も生まれたように思っていましたが,危険性の認識に乏しかったというほかないですよね。
https://lmedia.jp/2015/07/30/66248/
■アルハラとは?
飲酒の強要やイッキ飲ませなど、お酒に絡んだ嫌がらせのことをアルコールハラスメント、略して「アルハラ」と呼ぶようですが、アルハラそれ自体を規制する法律は見当たりません。
しかし、昭和36年に制定された酒に酔って公衆に迷惑をかける行為の防止等に関する法律第2条は、「すべて国民は、飲酒を強要する等の悪習を排除し、飲酒についての節度を保つように努めなければならない。」と定めております。
また、平成25年12月に成立したアルコール健康障害対策基本法も、不適切な飲酒がアルコール健康障害の原因となることを前提としていますので、急性アルコール中毒を引き起こし、生命に危険を及ぼしかねないイッキ飲みを強要するなどということは、やはりやってはいけない行為ということになります。

■法的責任の可能性
具体的にどんな行為がどんな罪に問われる可能性があるのかを見てみます。
脅迫して無理矢理飲酒させる行為は強要罪(3年以下の懲役)、酔いつぶす目的で飲酒させる行為は傷害罪(10年以下の懲役又は50万円以下の罰金)、飲酒を強要して急性アルコール中毒に陥らせる行為は過失傷害罪(30万円以下の罰金又は科料)となります。
また、周りで煽った場合は傷害現場助勢罪(1年以下の懲役又は10万円以下の罰金又は科料)、死亡させた場合は傷害致死罪(3年以上の懲役)や過失致死罪(50万円以下の罰金)などに問われる可能性があります。
さらに、飲ませる行為に加担しなくても、酔いつぶれた者を救護すべき義務がある者(保護責任者)が救護することなく放置して死亡させた場合には、保護義務責任者遺棄致死罪(3年以上の懲役)に問われる可能性があります。
厳格に定められるべき刑事責任に比較すると、民事責任は緩やかに認められる傾向にありますので、刑事責任を問われずに済んだ場合であっても民事責任を問われる可能性があります。

■過去の裁判例は
アルハラによる飲酒死亡事故の裁判では、飲酒そのものが被害者の自主的判断であるなどとして、アルハラの違法性を認めない傾向にありました。
しかしながら、平成20年に神戸学院大学の男子学生がクラブ合宿中に上級生らから「伝統」だとして飲酒を強要され、急性アルコール中毒で昏睡状態に陥ったにもかかわらず長時間放置されて死亡した事件において、裁判所が「(物理的でなくても)心理的に飲まざるを得ない圧力をかけた飲酒の強要」であるとして違法性を認める判断をしたあたりから、司法の判断の流れが変わったと言われています。
そうすると、サークルなどでイッキ飲みが行われる場合でも、「心理的に飲まざるを得ない圧力をかけたもの」と判断されるのであれば、それは違法行為となりますし、周りでそれを煽る行為も、やはり違法といえそうです。
これに対し、強要されることなく自らイッキ飲みをして急性アルコール中毒で昏睡状態に陥り、その後に死亡した場合、誰が責任を問われるのでしょうか。
直ちに救護しても救えなかったのであれば、誰にも責任を問うことはできませんが、救えたということであれば、救護義務に違反した人物が責任を問われることになります。
誰に救護義務があったものと判断されるのかは、主催者の有無、参加人数の多寡など、そのときの状況に応じて個別に判断せざるを得ないでしょう。
いずれにしても、イッキ飲みの危険性を認識し、自発的であっても決してやってはいけない行為と考えなければなりません。

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