コラム

 公開日: 2015-04-28 

「可算名詞」と「不可算名詞」は、存在するのか

英語の名詞に関する説明では、可算名詞と不可算名詞という分類が、よく使われています。
apple、cat、pencilなどの「数えられる名詞」には単数形と複数形があり、単数の場合は不定冠詞を伴うとか、抽象名詞や物質名詞は「数えられない」ので不定冠詞は不要とか・・・。

たしかに、英語にもcountable noun、uncountable nounという表現は存在します。
でも、「単語ごとに」この名詞は可算、この名詞は不可算と決まっている・・・わけではないのです。
むしろ名詞単位でいえば可算と不可算の「どちらでも使われる」語のほうが圧倒的に多く、片方の用法だけしかない語をあげるほうが難しいかもしれません。

数えられる名詞の代表例として使われることの多いappleも、たとえば次の例では「不可算」です。

The Lorikeets have their biscuit much more solid, and usually have bananas and 【raw apple】 instead of 【stewed apple】. (『The Avicultural Magazine』 Vol. 4, p.56)

もうひとつ、レモンやライムが不可算になる例です。
Be careful not to use 【lemon or lime】 in marinades because it will start to cook the fish.
(『The Tante Marie's Cooking School Cookbook: More Than 250 Recipes for the passionate home cook』 p.153)
レモンやライムの酸にはタンパク質を変性させる作用があり、この場合は1つ2つと数える具体的な果実ではなく、レモンなるものというような抽象的な意味ですね。

このように食材になるような動植物は、おおむね果実や動物の個体を意味するときは可算で、材料などの意味では不可算になるようです。
同様、植物の種類を総称的に意味するときも、不可算で用いられている例を目にします。

具体例をあげると、
the reference character 1 designates a hopper for receiving fruit, such as 【oranges】...
(米国特許第2739897号)

The present invention now allows for the processing of citrus fruit, such as 【oranges】 or grapefruit
(米国特許第6427584号)
のorangeは、可算=1つ2つと数えられる果実の意味でしょう。
一方、
this may be alleviated by varying supply of comforting fragrances, for example characterized according to herbs, lime blossoms, verbena or other aromas, such as 【orange】 or grapefruit.
(米国特許第8802012号)
は、個々の果実を示すわけではないはずです。

なお、grapefruitには、fruitやkiwi fruitと同様に集合名詞として単複同形(不可算)の用法があります。
2つ目の例文にあるgrapefruitと、3つ目のそれは用法が異なるのですが、形だけでは判断できません。
こういう場合、たとえば併記されたorangeの可算・不可算から類推するなど、文脈依存です。

※果実の意味だと集合的に扱われるgrapefruitも、種類を言うときは複数形をとります。
例)
Plaquemines Parish supplies us with all the citrus we need, growing some 20 types of citrus, including ruby, red, and white grapefruits...
(『My New Orleans: The Cookbook』 p.77)

以上のように、名詞の可算・不可算は意味によって変わることが多く、冠詞もしかりです。
定冠詞をとる代表例として書かれることの多い月(moon)にしても、三日月になれば「a crescent moon」があり得ますし、太陽も「rays of a summer sun」など、不定冠詞を伴って可算で使われる場面も。

ほかには、単数形で不定冠詞をとり得るのに複数形が存在しない名詞、逆に複数形はあっても単数に不定冠詞は伴わない名詞など、あげていけば本当にさまざまです。

タイトルは意図的に少々極端な方向に振っていますが、いずれにしろ「この名詞は可算、この名詞は不可算」という具合に名詞単位で覚えてしまうと、かえって理解のさまたげになるように思います。

名詞の可算・不可算は、あくまで意味上のことだととらえてるくらいで、ちょうどよいのではないでしょうか。

この記事を書いたプロ

有限会社サグラーシェ

通訳・翻訳 水野麻子

東京都西東京市新町4-1-3-601 [地図]
TEL:0422-38-5035

  • 問い合わせ

このコラムを読んでよかったと思ったら、クリックしてください。

「よかった」ボタンをクリックして、あなたがいいと思ったコラムを評価しましょう。

5

こちらの関連するコラムもお読みください。

<< 前のコラム 次のコラム >>
最近投稿されたコラムを読む
著作・講演など

■著書・『語学力ゼロで8ヵ国語翻訳できるナゾ―どんなビジネスもこの考え方ならうまくいく』 (講談社 2010.2;現在6刷)・『大人のための「超手抜き」英語勉強法』...

メディア掲載
ジャパンタイムズ

Japan Times(2002/2/18)TRANSLATION AND INTERPRETATION(6面) 特許翻訳業界の現状と将来の展望に関する記事です。英日翻訳で10,000ワード/日(※)の処理速度や、方法...

 
このプロの紹介記事
特許翻訳のノウハウは自著などで公開。

9つの言語で特許翻訳を手がけた経験がある(1/3)

 特許翻訳のスペシャリストとして活躍中の水野麻子さん。この道22年のベテランです。玩具、食品、電気、機械、化学、最先端のバイオやITなど、手がける特許翻訳は多岐にわたります。かなり専門性の高い内容でも、その完成度が高い仕事ぶりが水野さんの強...

水野麻子プロに相談してみよう!

朝日新聞 マイベストプロ

完成度の高い特許翻訳をスピーディーに行う

会社名 : 有限会社サグラーシェ
住所 : 東京都西東京市新町4-1-3-601 [地図]
TEL : 0422-38-5035

プロへのお問い合わせ

マイベストプロを見たと言うとスムーズです

0422-38-5035

勧誘を目的とした営業行為の上記電話番号によるお問合せはお断りしております。

水野麻子(みずのあさこ)

有限会社サグラーシェ

アクセスマップ

このプロにメールで問い合わせる
プロのおすすめコラム
科学技術英語 1700万語のコーパス
イメージ

サイト側のモバイル対応の有無を検索順位決定に使うGoogleの仕様変更や、サイト運営者によるSEO対策、機械翻訳コン...

[ 訳語調べ&情報収集 ]

誤訳訂正制度があるから安心?

日本では、平成6年の改正特許法(7年7月1日施行)で外国語書面出願制度が導入されました。同時に、翻訳文の...

[ 特許明細書 ]

政府の権利 珍訳・迷訳の原因は?

ときどき、英文明細書の冒頭に「Government Rights」の記載がなされていることがあります。発明(の少なくとも一...

[ 特許明細書 ]

複数のWord/Excel文書をまとめてPDFに
イメージ

WordやExcelで作成した複数の文書ファイルを、一括でPDFに変換したいという需要はわりとあるようです。それも、...

[ 各種ソフトウェア ]

アスタミューゼを使った「誤訳」判断

「世界中の課題を解決し、未来を創る人のプラットフォーム」であることを掲げたastamuse(アスタミューゼ)という...

[ 訳語調べ&情報収集 ]

コラム一覧を見る

スマホで見る

モバイルQRコード このプロの紹介ページはスマートフォンでもご覧いただけます。 バーコード読み取り機能で、左の二次元バーコードを読み取ってください。

ページの先頭へ