コラム

 公開日: 2015-01-02  最終更新日: 2015-04-14

英英辞典を楽しむ(1)

学校教育の現場では、英和辞典で単語の「意味を調べる」という表現を耳にします。
でも、英和辞典に載っているのは使用頻度の高い「訳語」にすぎず、単語の意味ではありません。

日本語で言葉の意味を知りたければ国語辞典を引くように、英語なら英英辞典。
いきなり英英だと敷居が高いという人は、英英辞典を翻訳した「英英和」辞典から入るという方法もありますが、とにかく意味を知るなら英英です。

その英英辞典。
どれも同じようなものかと思いきや、実際には、大きくわけて3つのタイプが存在します。

言語を軸にすると、英語を母語としない人を対象に作られた「外国人向け英英辞典」と、英語を母語とする人を対象に作られた「本国人向け英英辞典」。
タイプ別に見ると、学習辞典と一般辞典があります。

外国人向けのものは学習辞典のみで一般辞典は存在しませんが、本国人向けのものは学習辞典と一般辞典の両方があります。
学習辞典と一般辞典と言われても何となくピンとこない人は、日本語の国語辞典を例に考えてみると分かりやすいかもしれません。

本国人向けの学習辞典というのは、小学生や中学生程度の学習段階にある子供向けに作られたもので、一般辞典は大学生以上の大人向けのものです。
母語であっても、広辞苑と小学生用の国語辞典とでは難易度が全然違いますが、これと似たようなことがが英英辞典にも当てはまるわけです。

たとえば、社会人の人が仕事で文章を書くときに、国語辞典を使う場面を想像してください。
意味の確認に、小中学生用の国語辞典を使うことはほとんどないでしょう。
でも、たとえば日本語を勉強している外国人が広辞苑や大辞林を使いこなせるかというと、そう簡単にはいきません。

同じ「国語辞典」でも使う人の目的・用途・言語スキルなどによって最適なものが異なるように、私たち日本人が英英辞典を使うときも、自分に合った使いわけが必要です。
これは翻訳者のように言葉を商売道具にする場合であっても同じで、実務で言葉の意味を確認するときと、自分自身の英語力を高めるときでは、必ずしも同じ英英辞典が最適とはかぎらない、ということです。

参考までに、英英辞典によって定義がどのくらい異なるのかという例をひとつあげておきます。
単語は、penguin(ペンギン)です。

[American Heritage Dictionary of the English Language]
any of several flightless, aquatic birds of the family Spheniscidae, of the Southern Hemisphere, having webbed feet and wings reduced to flippers.

[Merriam-Webster Collegiate Dictionary]
any of various erect short-legged flightless aquatic birds (family Spheniscidae) of the southern hemisphere.

同じくWebsterの学習者用 [Merriam-Webster Learner's Dictionary]
a black-and-white bird that cannot fly, that uses its wings for swimming, and that lives in or near the Antarctic

[Scholastic Children's Dictionary](小学校中~高学年程度)
A water bird of the Antarctic region that cannot fly. The penguin uses its wings as flippers for underwater swimming.

[COBUILD English Learner's Dictionary]
A penguin is a black and white bird found mainly in the Antarctic. Penguins cannot fly.

[Longman Dictionary of Contemporary English]
an often large black-and-white seabird, esp. of the Antractic, which cannot fly but uses its wings for swimming.

[ワードパワー英英和辞典]
a black and white seabird that cannot fly and that lives in the Antarctic.
南極に生息する,飛べない,黒と白の海鳥→ペンギン

最後の英英和は『Oxford Wordpower Dictionary』の原文そのままに、定義文の邦訳と英和辞典のように簡単な訳語を付したタイプの辞書です。
用例が載っている語では、用例部分も日本語に訳されています。

COBUILDの学習辞典は、定義がフレーズではなく完成した文になっているのが特徴です。
Longmanにも、こういうタイプは出ています。

学習辞典は一般辞典に比べると定義で使われる単語数(語彙)が少なくおさえられているため、翻訳者の実務用途には向かないと思います。

以前、Longmanが定義での使用単語を2000語におさえた、700語におさえた、とかいうことが話題になっていた時期があるほどで、辞書によってはかなり少ない語彙で構成されています。
言うまでもなく実務で微妙なニュアンスの差をつかむことはできないのですが、英語に親しむ目的なら、このくらい語彙が少ないほうが投げ出さずにすむという人も多いでしょう。

このように、英英辞典にも、いろいろなタイプが存在します。
選び方を間違ってしまうと、負荷の割には成果につながらないということに、なりかねません。
そこで、何回かに分けて、学習という視点での英英辞典の楽しみ方をあげて参ります。

英英辞典がわかってくると、ゲーム感覚で遊べるようになりますので、おたのしみに。

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