コラム

 公開日: 2014-04-09  最終更新日: 2014-08-08

多言語翻訳の舞台裏(6)-言語の仕組みをとらえる

多言語翻訳の舞台裏(4)-文法事項」との関連です。
初めての言語と向き合うとき、その言語で何をしたいのかによって、選ぶ文法書も変わります。

ここでは、外国語から日本語に翻訳するという前提で、文法書の選び方のコツを説明します。
話せるようになりたい、あるいは検定や資格試験で高得点を取りたいといった目的には、合いません。

前述のように、対象とするジャンルごとに文章の「型」があり、そのジャンルによって頻出する文法事項が異なります。
そのことを踏まえて、「必要な文法事項」が含まれている文法書を選ぶようにします。

厚い文法書ならひととおり網羅されていて良いと思いがちですが、馴染みのない言語で最初の1冊にそういう本を選ぶのは、小学生が広辞苑を使うようなもの。
まずは、その言語の基本構造が「ざっくり」わかる薄い本を探してください。

たとえばロシア語の場合、黒田龍之介さんの『ロシア語のしくみ』という本があります。
発音の話も載っていますが、そこは飛ばして構造に関する部分を読むと、ロシア語という言語を俯瞰できる良書です。

著者自身が同書の中で書いているように、細かいことを言えば例外もあるのですが、そこはひとまず脇によけて大枠を理解できるように構成されています。
1時間半もあれば読み終わりますし、まずはこういうタイプの本で「ざっくり」感覚をつかむのです。

その上で、平易な文法書を探しましょう。
基準としては、

・例文には会話文が少なく、技術文に近い短文が載っている
・単元ごとに、「基本」「発展」「応用」など、難易度を分けて記載されている
・CDは付属していても、いなくても良い(発音が不要であるため)
・自分にとって、見やすい紙面構成になっている

あたりです。

ロシア語の場合、私にとっては前述の黒田先生の『初級ロシア語文法』が最良です。
これは比較的厚めなのですが、作りが非常に分かりやすく、薄い本と同様の感覚で要点をつかんでいけます。
でも、人によって違いはあると思いますから、自分で手に取って確認してください。

対象言語の領域で信頼できる著者が書いているものが手に入れば、理想です。
これは、その人の名前で出ている書籍の数とプロフィールから、おおよその予測はできます。

昨今ではスマートフォンなどの端末がありますから、この人かな?と思ったら、その場でインターネット検索をしても良いでしょう。

見やすさに関しては、総あたりするのが一番だと思います。
英語の場合は同じ方法を取りにくいのですが、英語以外の言語なら、書店や図書館で書架にある文法書を「すべて」確認したところで、大した時間はかかりません。

また、東京にアクセスできる地域に住んでいる方なら、それぞれの言語の専門図書館を利用するのもひとつでしょう。

日仏会館図書室
イタリア文化会館図書室
ドイツ文化センター図書館
セルバンテス文化センター東京フェデリコ・ガルシア・ロルカ図書館
日本ロシア語情報図書館

など、ひととおり揃っています。
たいていネイティブの司書や、その言語が堪能な日本人司書がいますから、どうしてもわからないことがあったときに質問できる味方も持てます。

なお、図書館によっては、ネイティブ司書の勤務日が特定の曜日だけということもあるので、必要な方は次善に電話確認を。


■関連コラム記事
多言語翻訳の舞台裏(1)-絞り込み
多言語翻訳の舞台裏(2)-多読
多言語翻訳の舞台裏(3)-辞書はあとまわし
多言語翻訳の舞台裏(4)-文法事項
多言語翻訳の舞台裏(5)-発音は不要
多言語翻訳の舞台裏(7)-資料のレベル

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通訳・翻訳 水野麻子

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